マンションのカーペットを剥がして防音(遮音)フローリングにするリフォームは、決して簡単な工事ではなく、失敗することが多いリフォームの一つです。
なぜなら、フローリングを張る下地の問題や、職人さんの施工不良、マンションの規則など、他のリフォームよりも問題が起きやすいからです。
マンション用の防音(遮音)フローリング材の基礎知識
防音フローリングとは
防音フローリングは、他にも遮音フローリングや直貼り(じかばり)フローリングなどいくつかの呼称があります。
戸建住宅よりも、マンションなどの集合住宅で使用されることの方が圧倒的に多いので、マンションフローリングとも言われております。
防音フローリング材の構造
一般的には、ベニヤの層と表面材の層でできた複合フローリングに、防音(遮音)のためのクッション材が張ってあり、ふわふわしたフローリング材です。
コンクリート床の凹凸でも張れるように、床材自体にスリット(切り込み)が入っているので、とても柔軟な床材ということが特徴です。
防音フローリングの遮音等級
クッションが付いた防音フローリング材は、一般的にL45、L40など遮音等級があります。
数字が低いほど遮音性能が高いということになりますので、L45よりもL40の方が遮音性が優れていて、歩行感も遮音値が高いほど柔らかいです。
フローリング施工法
施工方法は、一般的なフローリング材のように釘で固定するのではなく、ウレタンボンドやエポキシボンドなど、専用の強力な接着剤で床に直接貼り付けます。
接着剤の良し悪しによっては、浮いてきたり、剥がれてしまうこともあるので、専用の接着剤を使うことが重要です。
マンション管理規約を必ず確認し守りましょう
カーペットからフローリングにリフォームする場合、マンションごとに必ず守らなければならない管理規約があります。
お住まいのマンションで使用できる床材を確認
L45の防音フローリングを使用しなければならないのか、それとも、より遮音値が高いL40の防音フローリングを使用しなければならないのかを、マンション管理規約に基づきリフォームしなければなりません。
防音フローリングの特徴である、ふかふかした柔らかい床が嫌いだからと言って、ルールを無視してリフォームをすることはできません。
二重床構造の場合、遮音値がとれているのか確認
二重床なら遮音値がとれているので、無遮音の固いフローリングを張れるという専門家もいますが、それは間違いです。
なぜなら、マンションによっては、カーペット仕上げの為の二重床は、カーペット自体の遮音値に依存している場合があり、二重床の支持脚ゴムで遮音値が出ていない物を使っている可能性があるからです。
ですので、自己判断や業者任せにせず、必ずマンションの規則を確認し規則通りの床材を使用しなければなりません。
ちなみに、他にも業者が見逃しやすい場所は和室です。和室の二重床は固いゴムの支持脚を使っていることが多いため、二重床でも遮音値がクリアできない場合が多いです。
コンクリート下地と二重床下地の考えられる不具合
現在のマンションのカーペット下地は、基本的にコンクリート下地と二重床下地の2つです。マンションによっては、鋼製下地など稀に違う仕様がありますが、殆どがこの2つと思ってよいでしょう。
それぞれ、フローリングを張ることを前提としていないために、下地の不具合による問題が少なからず発生します。
コンクリート下地の不具合
コンクリート下地の場合は、カーペットを剥がした後に不陸(平滑ではない)があることが多く、マンション用の防音フローリングを張る際、仕上がりが問題になってしまうことがあります。
全体的に不陸がある場合は、部屋の真ん中が膨らんでいて、部屋の際に向かうほど下がっている事もあり、その逆もあります。
防音フローリングは、スリット(切れ目)が入っているので、不陸に追従できるようになっていますが、不陸が酷いコンクリート下地にフローリングを張ると、床が波打ってしまったり、歩行感がおかしい所などが出て仕上がりに問題が出る場合があります。
激しい不陸の場合は、現地調査時に判断が可能ですが、カーペットを剥がさないと判断ができないケースもあります。
二重床下地の不具合
二重床下地の場合はコンクリート下地と違い、床のレベル(水平)が取れているので下地の不陸補修は不要です。しかし、二重床下地特有の問題で、二重床下地が床鳴りしているところがある可能性があります。
通常の二重床は、木屑を固めた20ミリのパーチクルボードに5.5ミリから12ミリのベニヤで捨て張りしています。9ミリ以上のベニヤであれば釘でとめていますが、5.5ミリの場合はホチキスの様なステープルというもので固定しています。
ステープルは床鳴りしやすく床鳴りの音が小さいので、カーペットの時は気付きにくい場合が多いです。
ですので、カーペットを剥がしてから、複数個所で床鳴りが発覚することは珍しいことではありません。
下地の種類を事前に調べるには?
コンクリート下地なのか、二重床下地なのか一般の方では判断が付かない場合もありますが、その場合はかかとで強く床を鳴らし、コンクリートなのか二重床(木下地)なのか判断が可能です。
音が重ければコンクリート下地で、太鼓のように響けば二重床下地です。
しかし、コンクリート下地の場合は、ダウンスラブといって水廻りの近辺に配管を通すスペースが二重床になっている箇所もあります。
一般的な間取りの3LDK(カーペット部分の費用と日数)
カーペットからフローリングに張り替える数量と費用例
3LDKのフローリング施工範囲例
洋室(1)9㎡
主寝室(2)10㎡
ウォークインクローゼット2㎡
リビング15㎡
キッチン5㎡
廊下4㎡
上記の数量と仮定して、概算の見積もり内容を参考にしてみてください。
・既存カーペット及びグリッパー、巾木撤去 約45㎡ 3万円から5万円
・L45遮音フローリング材+施工費(ウレタンボンド込み) ㎡/1万円から1万4千円 45㎡ですと45万円から約60万円くらい
・木巾木 m/1000円から1200円 約50m 5万円から6万円
3LDK全面カーペットから防音フローリングに張り替えた場合は、合計 50万円から70万円くらいを目安にしましょう。
その他、養生費、家具移動費、運搬諸経費、産業廃棄物処理費なども業者ごとに算出法があり加算されますので考えておきましょう。
※施工実績がない業者ほど高い傾向にあります。
3LDKのフローリングに掛る日数
3LDKのカーペット部分が合計45㎡として、住みながらリフォームする条件の場合を例にあげてみましょう。
カーペットを剥がす工事とフローリングと巾木の工事。それから、ある程度の家具の量があることを考慮すると、3日から6日の施工日数が掛ります。※移動家具の量により前後します。
3LDKのフローリング工事の進め方
基本的にどこから施工するのかは、お客様と相談で決めて工程表を作成します。
工事の進め方は、業者さんごとに考え方があるので一概には言えませんが、それぞれの部屋ごとにカーペットを剥がしてフローリングや巾木の仕上げまで施工するやり方が一般的です。
>>遮音フローリングの張り替え業者の選び方!施工不良が多い原因を詳しく解説はコチラ
6畳間の洋室をカーペットからフローリングにする目安
全面を張り替えるのではなく、6畳間だけフローリングにしたいという方も多いので、費用など参考にしてください。
フローリングに張り替える数量と費用例
・既存カーペット及びグリッパー、巾木撤去 約9㎡ 1万円から2万円
・L45遮音フローリング材+施工費(ウレタンボンド込み) 9㎡/9万円から12万円
・木巾木 m/1000円から1200円 約10m 1万円から1万2千円
6畳間約9㎡ですと、諸経費を含めて合計15万円から約18万円くらいを目安に考えておけばよいでしょう。
6畳間の洋室工事に掛る時間
6畳間のフローリング張替えの場合は、何も問題が無ければ朝9時に開始して、夕方には完了します。
6畳間の洋室工事の流れ
工事の流れは、部屋の家具を別の部屋に移動して、カーペットを剥がしてからフローリングを張り、張り終わった後に荷物を復旧する方法が一般的です。
他の部屋に荷物が多く移動できない場合は、部屋の中で移動しながら半分ずつ仕上げていく方法をとります。
6畳間洋室 家具の復旧
重い家具は施工当日に復旧しないこともあります。接着剤で施工する防音フローリング施工後に、重い家具はその日に戻さない事があります。
なぜなら、加重が掛って沈んだまま固まって、戻らなくなってしまう可能性があるからです。
ですので、重量物がある場合は、完全硬化した翌日に戻した方がより良いでしょう。
施工翌日の家具戻しをご自身でできるなら良いですが、移動が困難な場合はリフォーム業者さんに依頼しなければなりません。
防音フローリングリフォーム材の選び方
カーペットから防音フローリングにするリフォームは、通常のフローリングのリフォームとは違い、必ず確認しなければならない事があります。
防音フローリングの柔らかさを確認
防音(遮音)フローリングは、想像していた以上に柔らかい感触だと思う方が多くいます。L40など遮音等級が優れているほどフローリングは特に柔らかいです。
遮音値が同じ条件でもメーカーによっては、歩行感に差があり、柔らかすぎるメーカーと案外固く感じるメーカーがあります。
床材のサンプルで歩行感を確認できれば一番良いですが、何種類ものサンプル材を持っているリフォーム業者さんはあまりいません。
フローリングの伸縮や不陸に対応できる巾木を選ぶ
リフォームの出費を減らすために、既存の巾木を残して巾木にぴったり付けてフローリングを施工する事がありますが、この施工方法はおすすめしません。
なぜなら、マンションの防音フローリングは伸縮しやすく床鳴りや隙間の問題が発生するからです。
通常、マンションの防音フローリングは、伸びた場合に干渉しないように壁際に必ず隙間をあけて施工します。
壁際の隙間は巾木で隠すのですが、ソフト巾木の厚さは2ミリ程度で薄いので、壁際の隙間を充分に確保することができません。その点、7ミリ前後の木製巾木なら、3ミリから5ミリの隙間を確保できることから、木製巾木をおすすめします。
防音フローリング施工は慣れている業者に依頼しましょう
マンション用の防音フローリング(直貼りフローリング)の施工は、必ず慣れている職人さんに施工してもらうことをおすすめします。
なぜなら、一般フローリングよりもマンション用の防音フローリングの仕上がりにトラブルが多いからです。
マンション用の防音フローリングで多い施工トラブルは以下の通りです。
- ウレタンボンド付着のトラブル
- 極根太(きわねた)の施工トラブル
- 調整不足によるトラブル
ウレタンボンド付着のトラブル
マンション用の防音フローリングは、専用の接着剤(ウレタンボンド)を使用しますが、トラブルで一番多いのが、フローリング表面にウレタンボンドの跡を着けてしまうことです。
ウレタンボンドは、付けてけてしまってもすぐ綺麗に拭きとれば何も問題ありません。しかし、時間が経過し硬化してしまうと綺麗に除去することができません。
誰が見でもわかるような接着剤跡を残してしまうのではなく、一番問題になるのが、指紋が付いたような接着剤の手跡を薄っすら付けてしまう事です。
施工慣れしていない職人さんですと、接着剤の手跡を付けてしまったことに気付かない場合が多いです。
極根太(きわねた)の施工トラブル
マンションフローリングの施工上で問題が起きやすいのは、際根太の施工不良問題があります。
遮音フローリングでいう際根太とは、出入り口の床見切りや、玄関の上がり框部分の突きつけ部分はフローリングが沈まない様にする作業です。
マンション用の防音フローリングのクッション材は3ミリから4ミリあるのですが、一部数センチ剥がして、同じくらいの厚さのベニヤをあてて沈まない様にします。
突き付ける部分が柔らかいままですと沈んでしまい、擦れて床鳴りしてしまいますので、新築のマンションでは、必ず際根太処理をします。
調整不足によるトラブル
カーペットを剥がしてコンクリート下地だった場合、床見切りや玄関の上がり框(あがりかまち)など左右で高さが違うことがあります。
具体例は、見切りや玄関の框で左右で高さが違い、左側が3ミリ段差があるのに対して、右側が1ミリも段差が無いなど、仕上がりが左右均一にならないということで、見た目の問題が発生します。
ある程度フローリングを張る前に職人さんがチリ調整(段差を均一にすること)をしてくれると思いますが、経験の少ない職人さんですと調整不足のまま仕上げてしまい、仕上がりが悪くなります。
>>遮音フローリングの張り替え業者の選び方!施工不良が多い原因を詳しく解説はコチラ
フローリングに変わってから注意すべき3つのこと
今までカーペットの時には気にしていなかった事も、フローリングにしたら注意しなければならない事が主に3つあります。
- 騒音の苦情に注意
- フローリングの傷に注意
- ハウスダストの飛散に注意
それぞれ詳しく解説していきましょう。
騒音の苦情に注意
カーペットの時は苦情が全く無かったのが「フローリングにしてから苦情が出てしまった!」という事例もあります。
なぜなら、高い遮音性能の防音フローリングでも、カーペットの遮音性能に比べると落ちるからです。
特に、子供が走り回る音やジャンプしたときの音などが、下の階に響きやすいです。
フローリングの傷に注意
カーペットの場合、気をつけなければならないところは、汚れや染みなどでしたが、フローリングの場合は傷つきやすいことです。
特に、ダイニングテーブルの椅子や、キャスター付きの椅子は簡単に傷ついてしまうので、注意しなければなりません。
とは言え、傷つきやすいからとダイニングテーブルまわりにカーペットを敷いたり、6畳の子供部屋にカーペットを敷いたり、キズ防止のために家中カーペットを敷くのでは、カーペットからフローリングにリフォームする意味がありません。
ハウスダストの飛散に注意
今回、カーペットからフローリングにリフォームを検討している理由は、カーペットに潜むダニや、ダニの死骸などが原因かもしれないということからでしょう。
たしかに、マンションの古いカーペットからフローリングにリフォームすることにより、喘息の薬が手放せなかった方が、フローリングにしてから薬がいらなくなったという事例が過去にありました。
しかし、カーペットからフローリングにしただけでは、根本的な対策にはなっていません。
なぜなら、フローリングに変えたことにより、カーペットの時よりもハウスダストが飛散しやすい環境になっているからです。
カーペットはダニやハウスダストがとどまりやすく、多くの問題がありますが、飛散しにくい利点も少なからずありました。
フローリングの場合は、とどまりにくいハウスダストが掃除機等により部屋中に舞い上がって症状が改善されないという方もいます。
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まとめ
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